福島県飯舘村は屋内退避させるべきか否か

ソフトバンク孫正義さんが、Twitterで、政府の出している避難指示に関して、http://twitter.com/masason/status/51832607117295616 以下のように書いていて、この問題についてです。

政府は飯舘村南相馬市に明確な避難命令を出すべき。RT @mryoshi55: 政府が中途半端なことをするから、ここ米沢の避難所から飯館村南相馬市に戻る避難者が今日出てきた、今はまだ止めた方が良いと思う

http://twitter.com/masason/status/51836389716795392

「直ちに問題無し」「避難命令拡大不要」を連呼する政治家や学者は自らの家族がそこにいても避難させないのだろうか? @dunce_jp @masason: 政府は飯舘村南相馬市に明確な避難命令を出すべき。

僕は、政治哲学として、「平時に決めた緊急時マニュアルはちゃんと守るべき」というのが僕のスタンスです。国が決めた、ルールは以下の通りです。

対策 外部被ばく 内部被ばく
屋内退避 10ミリシーベルト〜50ミリシーベルト 100ミリシーベルト〜500ミリシーベルト
避難 50ミリシーベルト以上 500ミリシーベルト以上

この問題、色々な単位が飛び交っていて、ややこしいのですが、これは「累積量」です。混乱している方もいますが、「1時間あたりの」というやつではないです。なお、1ミリシーベルト以下なら、日常で自然から浴びるレベルなので無視できるとされています。そして、健康被害が出るのは500ミリシーベルトといわれ、福島第一原発で命がけで作業に当たっている人たちで100ミリシーベルト以上被ばくしている人が多数いますが、今のところ大丈夫みたいです。国の基準の詳細は http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/03/28/1304305_2810.pdf の末尾2ページをご覧ください。

現在は、

  • 半径20km以内 - 避難
  • 半径20〜30km以内 - 自主避難(元は屋内退避)

という指示が出ています。

あと、内部・外部とあるのですが、以下、「外部被ばく」の方で、計算します。なお、「内部被ばく」の方は、SPEEDIによるコンピューターによる概算の予測値があるのですが、外部被ばくの方は17日以降は実測値があり、より実際に近いはずなので、外部被ばくの方をみます。この違いも、ややこしいよね。

なお、僕はIT業界の人で、原子力は素人ですが、一連の話、超ひも理論素粒子)を研究している友人に色々教えてもらいました。(ただし、彼も、厳密には原子力工学は専門じゃないです)。色々ありがとうね!あと、専門家の皆様、この記事に誤りを含んでいたら、訂正お願いいたします。m(_ _)m

次に、外部被ばくで問題となる、飛んでくる放射性物質ですが、風に流されて飛んできて、雨が降ると大量に地面に落ちてきて、地面に降りてくるとあまり動かなくなり、その場で放射線をまき散らすそうです。放射線には半減期というのがあり、例えば、今回、大量にばらまかれている、ヨウ素131だと、半減期が8日なので放射線の量は8日で1/2、16日で1/4とだんだん減っていきます。

そして、放射性物質が大量に飛散した原因は、3月15日あたりに、福島第一原発のバッテリーが切れた後、原子炉の格納容器内の圧力が高まったので、中の空気をそのまま外に逃がす作業を緊急的にやっていました。ここら辺の経緯は 福島第一原子力発電所事故 - Wikipedia をどうぞ。

ただし、この作業は、最近は行っていません。なので、

  • 新たに放射性物質を大量飛散させるような作業を原発で行わない
  • 雨が降っても、これ以上、放射性物質が大量に落ちてくることはない

ならば、あとは半減期で減っていくだけです。確証はもちろんないですが、現状の様子だと、この2つ、どっちも起きる可能性は低そうな気がします。(ちなみに、最近問題になっているのは、空気中ではなく、海に放射性物質をまき散らしています)

というわけで、新たに放射性物質が増えないなら、半減期を足し算(積分)すれば、放射線量の「累積量」がわかります。

その計算に必要なデータは文部科学省http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304001.htm で公開しています。風は北西方向に吹くことが多く、北西方向に多く放射性物質が飛んでしまったので、北西方向の以下の3地点を選びました。全て、30kmエリアの外です。自主避難などが出ていないOKとされている場所です。

場所 距離 計測地点番号
浪江町津島 30km 32
飯舘村 40km 62
福島市 60km 1

文部科学省が計測しているのは、役場や小学校があるなど、それぞれの集落の中心部です。今問題になっているのが「飯舘村」です。「浪江町津島」は自主避難してしまったのか、多くの人が残っているのか僕はよくわかりません。

結論

先に結論を書いてしまうと、以下の通りです。mSvはミリシーベルトです。

場所 距離 15日から積分 17日から積分 判定
浪江町津島 30km 39.4mSv 30.4mSv たぶんアウト
飯舘村 40km 8.3mSv 6.5mSv たぶんギリギリセーフ
福島市 60km 2.1mSv 1.7mSv たぶんセーフ

計算方法

まず、文部科学省が発表している元データです。15日から飛散しているのですが、多くの地点で計測を始めたのは17日からなので、17日からのデータです。単位はマイクロシーベルト/時です。1000マイクロ=1ミリです。

日付 経過日数 浪江町津島 飯舘村 福島市
3月17日 0 170 7
3月18日 1 150 30 8.5
3月19日 2 136 26.5 7.2
3月20日 3 110 25.8 5
3月21日 4 90 20.4 5
3月22日 5 75 15.3 3.5
3月23日 6 75 16.8 4
3月24日 7 65 13.2 3.6
3月25日 8 65 12.3
3月26日 9 46 10.2 2.5
3月27日 10 50 11.2 3.5

飯舘村の3/17のデータはおかしかったので空欄にしました。3/18のデータも30以上となっていますが、30としました。

これをグラフにプロットすると以下のようになります。半減期は指数関数で表現できるので、Excelの近似曲線は「指数近似」です。浪江町津島や飯舘村はかなり綺麗に近似曲線にフィットします。福島市は少し不正確です。



この近似曲線を積分すると、累積量がわかるのですが、3月15日は経過日数「-2」なので、「-2〜無限大」で積分すると累積量がわかります。ただし、3/15や3/16のデータがない部分をこのように予測値で埋めて良いのかどうかは、若干、不確実です。しかし、それにより、判定結果が変わるわけではないので、この手法を採用しても大丈夫だと思います。「結論」の「15日から積分」が「-2〜無限大」で「17日から積分」が「0〜無限大」です。

積分計算は WolframAlphaを使いました。計算結果のリンクは以下の通り。浪江町津島の分だけ、キャプチャ画像を張ります。


専門家へのお願い

原子力が専門家の方は、もっともっと、ブログなどでインターネットで、現状どうなっているか解説記事を書いていただけるとすごく嬉しいです!正確な情報が広まれば広まるほど、非科学的な行動をする人・デマに流される人・政府や電力会社のおかしな行動は相対的に減ります!

そして、一日8時間以上インターネットを使っている(笑)、インターネット業界の人は、難しめの専門的な記事は、クチコミで広がりにくいので、専門家による良質な記事を見つけられた際は、Twitterはてなブックマーク などで、少しでも「拡散」するように、ぜひぜひ、ご協力をお願いします!

疑問点(半減期

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%B8%9B%E6%9C%9F半減期の計算方法があり、上記の近似式を使うと、半減期は以下の通りになります。

場所 半減期
浪江町津島 5.3日
飯舘村 5.6日
福島市 6.6日

5〜7日とヨウ素131の半減期の8日よりも少し短いです。原発に近いほど減るペースが速く「風で再拡散しているのでは?」という説を教えてもらったのですが、そういう物なのでしょうか?